ゲーセン裏話 第四話

気が向かないと書かないゲーセン店員の頃の実話です。

おばば

 ゲーセンのメンバーは例の店長をはじめ、数名のアルバイトがいて、昼番と夜番の交代制です。みんなイカ臭そうなバイト野郎ばかりの中に女性アルバイトが一名おりました。女性と言いましたが、年齢はなんと70くらい、しかも独身です。一人者なので子供など生んでいません。性格も天然ボケなのか本当にボケが来ていたのかは知りませんが、いたってマイペースなのでストレスなどほとんどなかったのでしょう。年の割に、お肌もピチピチ、髪も黒々していて、そのアンバランスさがますます恐ろしさを引き立てていました。そしてもちろん女性用のユニフォームを着ているのでミニスカです。彼女は平日の昼間担当で、毎日朝9時半から夕方の4時までの担当です。

 月曜日から土曜日のお昼はその独身おばばと男性バイトになるのですが、当然私にもそのおばばの相手が回ってきます。このおばば、こんな年ですからもちろん機械などさわれる訳もなく、せいぜい出来ることといったら例のバスケットマシーンで60点を出したガキに余ったUFOキャッチャーの人形をやるのと、女便所の掃除くらいです。それ以外の時間はひたすらカビ臭い古本を読みふけっています。それにしてもこのおばば、せっかく60点出してよろこんでいる小学生に2回連続で同じ人形(ヘナチョコ)を何食わぬ顔で渡したときには、この小学生も「このクソババア」って顔をしていました。

 午前中などはほとんど客も来なくて、有線だけが流行りの曲を垂れ流しているだけですから、私もおばばに「ちょっと買い物行ってくるわ」とカギを預け、外にサボりに出ます。30分もして戻ってみると「おにーちゃん、あのねっ、なんか来てたから、適当にやっておいたから」と言うではありませんか。見てみるとUFOキャッチャーの扉が風に吹かれパタパタしています。おばばなりに頑張った姿が目に浮びます。

 ある夏の日のこと、今日もさわやかに朝9時半に店に行くとそのおばばが血相を変えてやってきました。「おにーちゃん、ちょっともう、これ!」と女便所へとついていく私。そしてそこにはなんと巨大な一本糞が床に横たわっているではありませんか!昭和一桁生まれなんだからこんなのクソでもないだろ!本当は自分のじゃねーか?などとブツブツ言いながら片付ける私。さしものおばばもウンコには弱かったようです。そんな彼女は今日も、ナゾの油がたっぷり浮いたコーヒーを私の為に淹れて帰っていくのでした。

静電気との戦い

 ゲーセンという場所は何台ものシリコンパワーで電力を馬鹿食いする施設ですから、おのずと室内温度は上がります。この北の極寒の地で外がマイナス10度になろうが、暖房をつける必要はまったくありませんでした。毎月やって来る電気代の支払い用紙には40万円を超える数字が踊っています。簡単に計算すると電気代だけで一時間1000円も食っていることになります。何て地球環境に厳しい施設なんでしょう。そんなわけで、室内は空気が乾燥してカラカラ状態なわけで、私が安物のズボンをはいていたせいもあって、体中に静電気がたまることになります。「さあ、今日もバーチャロンやろーっ」と、座ったとたんにバチッ!筐体のモニタを拭いてバチッ!しまいには、靴の先端から筐体に向かってバチッ!もっとひどくなると、筐体から30センチも離れているのに青い火花が飛び散ります。しかしこちらも黙って電気人間に甘んじているわけではありません。いくつか必殺技をあみ出しました。一番いいのが筐体体当たりです。背中をアウトランナーズの椅子の背に「ボンッ」とぶつけたり、デイトナ筐体にダッシュで抱きつくことにより、安心してふたを開けてクレジットを入れることができます。あと「カチャカチャおやじ」に放電という荒業もありますが、良い子は真似しちゃいけません。

 ところがある日、ついにやってしまいました。やっとのことで1コイン(1プッシュ?)で最後までいけるようになったお気に入りの「ぱずる玉」筐体。さあ、今日こそはと筐体に近づいた瞬間、それまでで最大級の電圧が指先から放出されたかと思うと、「ボムッ」と一声、画面が灰色に…「ゲッ」…再起動…基板コネクタつなぎなおし…しばらくそっとしておく…筐体を殴る…どれもだめでした。せっかくのお気に入りだったのに。ああ、さようならパズル玉、楽しいひとときをありがとう。静電気恐るべし。

 ちなみにその筐体には数日後「ウルトラマン」が入りました。これが大変なゲームでしたが、それはまた次のお話。

 まだまだ書き足りないことが山ほどあります。気が向いたらまた筆をとりますのでお楽しみに。

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