ゲーセン裏話 第三話

今だから話せるゲーセン店員時代の四方山話です。

職業病

 人間ある仕事をしているとそれが次第に身について体の一部になるものです。もちろん我がボロゲーセンも例外ではありません。

 「呉服屋の仕事は掃除」という話をきいたことがあります。なぜかというと呉服屋は客が滅多に来ないので、店員が暇でしかたなく、掃除ばかりしてしまうらしいからです。そうです、私のいたゲーセンと呉服屋では「暇」という共通点がありました。バーチャコップの銃は一人プレーするたびに拭いていたので、手垢などもちろんありません。椅子は乱れたら速攻で直すので、店内はいつもスッキリです。客の少なさもスッキリ度に貢献します。最初の頃は手で椅子を直していました。しかしそのうち、腰が痛くなるので、歩きながら膝で直すようになりました。そして、私が別なゲーセンに行ったときのことです。しばらくしてあたりを見渡してみると、椅子がスッキリ。完全に無意識でした。この「膝押し椅子直し」の癖はいまだに残っています。その他、椅子直しの技としては「回転2列連続直し」「マシンガン直し」などがありますが、どんな技かは皆さんの想像にお任せします。

 しかし、こんな私はまだまだ甘チャンでした。人間はあらゆる環境に適応する動物らしいのですが、その最もゲーセン向けに進化(退化?)した生物があの店長です。彼の右手の人差し指と親指の間隔は、コイン10枚の厚さと等しいのです。左手に大量の100円玉をもち、毎秒約2回の速さで右手が動きます。見る見るうちに10枚に分けられた山が出来あがっていきます。ためしにメダルでやってもらいましたが、何度やっても10枚ピッタリ。悔しいので、他店の豚さんメダル、10円玉、1円玉、しまいには500円玉までもちだしましたが、結局只の一度も狂ったことはありませんでした。私もこの技を習得しようと日夜それは鍛錬を重ねましたが無理でした。  

 ゲーセンといえばたくさんの筐体が並び、店内はゲームサウンドで満たされています。「デイトーーナーー」だの「セガ・ラリー・チャンピオンシップ!」だの「Are You Ready!」だの。ある日あまりのうるささに耐え切れなくなって、ゲームのデモサウンドを片っ端からOFFにしてやりました。怖いですよ。シーンとした営業中のゲーセンというのは。もちろんそのあと元に戻しましたけどね。で、店員を始めてしばらくしたころ、夜の寝つきが悪くなってしまったのです。原因はその騒音というより、電磁波のせいだった気がします。家庭用機器と違って、筐体はほとんど電磁波シールドがされていませんから全部垂れ流しです。営業が12時に終わって、全部の電源を落とすと、「ホッ」としたものです。それも並大抵の「ホッ」ではありません。全身に溜まっていた何かがスーと抜ける感じと言えばいいのでしょうか。店員をやめたらとたんに寝れるようになりました。電磁波は怖いですね~。ちなみに、営業終了後、筐体の電源を落として有線の「お経」チャンネルにするのも別な意味で怖いです。お試しあれ。

ブーム

 ブームと言ってもお客がやるゲームのブームではありません(何ちゅう店だ!)。店員の中で密かに流行っていた変なものたちです。

  • ブーム1:バスケットボールゲーム、めざせ100点!
     これは今でもある店があります。名前はえーと「チャンピオンシップ…」か何かだったはずです。ゴールが二つあって、シュートを決めると「ナイス!」とか言うマシンです。私の店は60秒で60点出たら景品もらえる設定でした。ちなみに景品とは「余ったUFOキャッチャーのぬいぐるみ」を意味します。店によっては45秒で40点とかいろいろあるようです。これが店員の間で流行りました。まずカギを開けてクレジット投入。そしてスタートボタンは手ではなく、もちろん膝で押します。足は肩幅より広め。あとはひたすらマシンのように同じ軌道で右ゴールの上の四角部分を狙います。特に最後の20秒は得点が3点になるので、気合が必要です。もちろんプレイ後には初代「力水」で乾いたのどを潤します。ハイスコアは.nvに記録されますので、電源を落としても消えません。私の出番の日、最高点70点。今日こそ記録更新75点。次の出番の日、何?破られている…よし!80点じゃあ。ゲ、83点。といった具合に昼番、夜番の人達が密かに競い合い、結局私ではない誰かが100点を出したはずです。はっきり言って90点以上は神の領域になります。
  • ブーム2:コラムス
     なぜかみんなこれにはまりました。店員中、一番うまいのが店長。もちろん営業中のプレーです。このゲームだけはタダゲーが見つかっても、店長が無口にならない唯一のゲームです。一週間の売上(「インカム」などという言葉は一度も使いませんでした)が2000円もないのに、ずっとカウンタのすぐそばに陣取っていました。ある日、客で猛烈にコラムスがうまいのが来て、1時間以上もねばってしまいました。店長はコラムスがやりたくて仕方ありません。おまけにライバル出現ということで、闘争心をメラメラと燃やしてしまいました。「ちょっとあいつに邪魔すれ」って、勘弁してよ、てんちょー。
  • ブーム3:占いマシーン
     一応占いマシンもあったのです。これも名前が…えー「何とかフォーチュン」だった気がします。トラックボールがあるやつです。この類の機械(「それいけココロジー」とか)、初めて中を開けたときにはビックリ。何と、普通のレーザープリンタが一台丸ごと入っています。紙は専用のあらかじめ枠が印刷されたものをセットします。この1回200円のマシンが流行りました。初めは月に1回だったのが、出る度に毎回やるようになり、しまいには一日2回とかやってました。しかも2人で。そうなると当然、トナーが切れます。たたいたり、振ったりしてごまかしていたうちは良かったのですが、そのうち、何にも出なくなってしまいました。
    「店長トナー切れました」
    「あれ、ずいぶん早いな、そんなに金入ってないのに」
    「何ででしょうねえ?」
    その後「占い禁止令」が出たのは言うまでもありません。ちなみに、この占いマシン、当たりません。

 不思議なもので書いているうちにいろいろ思い出すものです。気が向いたらまた筆をとりますのでお楽しみに。

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