ゲーセン裏話 第二話

今だから話せるゲーセン店員時代の物語です。

メダルゲームあれこれ

 第一話でも書いたのですが本当にボロく、それはそれは小さなゲーセンでしたが、それでもメダルコーナーなるものがありました。どんな顔ぶれかというと、ダービーのでかい奴、オンボロビンゴマシン、ポーカー、花札、麻雀、スロット数種、あと2段式の台がスライドするマシンで横長型と、汽車ぽっぽ型、あとは、そうそう、途中で3×3のアナログのスロットが入りました。特にオンボロビンゴはしょっちゅうトラブっていました。「ピンポン、ピンポン」「ハイハイハイ、バシッ!」。野比家のテレビよろしく、叩くと直ります。マシンを開けると、玉発射装置にはガムテープだらけ。8つあったテーブルの奥2つは結局電源が入ることはありませんでした。ちなみに、透明巨大ボールの中で玉が吸い込まれる型のビンゴマシンではありません。それからダービーマシンは、電磁石で馬が走るやつの初期型でした。今のように大型ビジョンなどはついてません。実はあの「馬マシーン」、後ろ奥の扉を開けて、あるスイッチを押すと、トラック全体(緑の芝部分)が上に30センチくらいリフトアップするようになっています。初めて見た時はビビったものです。上がった所の横扉をあけると、馬を動かす自走式小型メカが取り出せます。昔あったマッピーロボの超小型版みたいなのでかなりのハイテクでした。ちなみに走っている馬と下のメカがずれると派手な音でビー、ビーと鳴ります。人間、動いているものは触りたくなるのが性というもので、週に1人は「ビービー」言わす客がいました。気持ちはよーくわかります。ギャルなら笑顔で「わかりますよ~」、中高生だったら「おめーか?この!くそがき」と言いながら、馬をいじって下の磁石を探します。触ってしまった人は大抵、ドッキリカメラにやられたみたいな顔して、笑ってごまかそうとします。でもあの「馬マシーン」、値段を聞いてびっくり、1500万(くらいだったはず)だそうで、下手したら本物の馬主になれます。

 ところで、各マシンが集めたコインはどこにいくのでしょうか。入ったメダルはまず、ホッパーと呼ばれる全自動雀卓の中身のような部分にたまります。そこがあふれると次に、マシンの下のほうにある受け箱にたまります。各テーブルの一番下部分にカギがついているところです。パチンコ屋のように自動的に集まれば楽なんですけどね。大型店では毎日回収するのですが、当店は暇を絵に書いたような店だったので週に一回でした。集めたメダルはカウンターの中にあるメダル箱に入れておくのですが、その前にやることがあります。他店メダルの選り分けです。うちの店はメダル1枚20円でしたが、近所のデパートのお子様広場は1枚10円だったのです。そのため、結構な数の「ぶたさん」メダルが混入しています。その他いろんな種類のメダルがありました。後輩君がそれをコレクションしていたのですが、結局40種類くらい集まっていたようです。

 お馬ゲームも払い戻しの率が設定できるのですが当店は80%くらい。説明書見てもどのDIPか分からなくて、「高電圧注意」とか書いてあるし、結局いじりませんでした。あれ以来、今日の今日まで一度もメダルゲームはやってません、っていうか死ぬほどタダでやったのでもう結構です。最後にゲーセン店員やってわかったことがあります。それは「メダルゲームは絶対に勝てない」ということです。いくら2000枚当たっても、3回、4回来店すると確実に無くなります。
ただし、あの男を除いては...

お客あれこれ

  • 日曜の男
     あの男とはこの男のことです。やせ気味でどう見ても不健康そうな彼のメダル所持数はなんと20000枚!毎週日曜の開店と同時に現われ、夕方まで1人、例の「馬マシーン」に興じます。普通の人間ならメダルは無くなるはずです。しかし、私がいた数年間、彼は一度もメダルを買うことはなく、毎回少しずつ増やすことができた唯一の客でした。お金を落とさないから店長も「あいつ、追っ払え」です。不気味な男でした。噂ではあの馬マシーン、パターンがあるらしいのですが、結局店員だった私もわからずじまい。残念。
  • カチャカチャおやじ
     もっと謎なのがこのおやじです。店に来るなり、いつもまっしぐらに彼お気に入りのスターウォーズマシンに座り、ボタンをカチャカチャ始めます。もちろんお金は入れてません。スロットルレバーをオンにしてニヤッ、スタートボタンを押してニヤッ。カチャカチャニヤニヤは何十分も続きます。よっぽどのボタンフェチに違いありません。でも店長はやっぱり「あいつ、追っ払え」です。こういう役はいつも私です。何と声をかけていいかわからず、しばらくウロウロしてやっと出た言葉が「おじさん、ボタン好きなの?」。彼は悲しそうに帰っていきました。と、見せかけて入り口の見えないところでUFOキャッチャーのボタンと戯れてました。
  • インド人親子
     ある日いかにもインドな子供が2匹、いや2人入ってきました。何やら訴えているのですが、ものすごい訛りのある英語で「ゲーム、ゲーム」しか分かりません。次に親がやってきて「ゲームが欲しい」らしいことがわかりましたが、目の前にオモチャ屋あるでしょう。店長は「いい、いい、追っ払え」でした。
  • 忘れられたアタッシュケース
     ある日立派なアタッシュケースがイスの上に置き去りにされていました。店長は初め「爆弾じゃないか」とか言ってましたが、こんなボロゲーセン、爆破しても何の得もありません。持ち主の手がかりは無いものかと開けてみると、結構大きな会社の営業マンであることがわかりました。年もいってる様で、肩書きもほどほどの人でした。本社は遠いので、出張で来てうちに寄ったときに忘れていったのでしょう。結局数日後、無事彼の元にそのアタッシュケースは戻ったのですが、なぜその中にお隣のテレクラ会員証が入っていたのかは私には分かりません(笑)
  • ユーロビートチャリンコ男
     毎日夕方6時に店の前を通りすぎる男です。いわゆる「デコチャリ」ってやつで、普通の自転車にバッテリー、紫のパトライト、ステレオを装備して大音量でユーロビートを奏でながら車道の真中を堂々と走るその勇姿!車にクラクションを鳴らされても平気な面で走り去っていくのでした。

 当時はちょうど、携帯が少し安くなり始めた頃で(とはいっても、基本料は月一万円くらい)、もう田舎ヤンキーは見せびらかしたくてしょうがないらしく、まず筐体に座る、そしてバーチャ2の技シールのところにご自慢の真っ黒い炭のようなケータイを見えるように置く、それからおもむろにゲームを始めるのが一般的なスタイル(?)でした。腰にはもちろん携帯ホルダーです。今考えたら本当にヒヤーっとします。あ、ちなみに私はポケベルでした。うおー、懐かしい。うっ、イヤなこと思い出した(笑)。

 なんだかこんなこと書くと、こんな変人ばかりの店だったのかと思われるかもしれませんが、もちろんごく普通のカップルや親子連れ、一般のゲーム好きの人達も来ていましたよ。一応ね。

 今回はあまりゲームとは関係ない話題になってしまいましたが、気が向いたらまた筆をとりますのでお楽しみに。

第三話→