Eyes for Details Vol.6 - MacMAME共同開発者 Aaron Gilesインタビュー

November 11th, 1997
インタビュアー:Chris Knape
Knaper's MacMAME Info Depot

 インターネットではクールなアプリケーションのバージョンアップが毎月行われています。MacMAME0.30のリリースがいよいよ間近になりましたが、私達はMacMAMEのもう一人の立役者に話を聞く頃合と考えました。今回インタビューに応じてくれたAaron Giles氏もMacMAMEの開発に多くの時間と努力、そして愛情を注いできた一人です。Giles氏や他のプラットフォームに携わっている多くのMAME開発者の貢献は称賛に値するものでしょう。

CHRIS KNAPE:まずはじめにGilesさん自身について少し教えていただけませんか?

Aaron Giles(以下AG):出身はオハイオ州トレドです。シカゴ大学に進んで物理学を専攻していましたが、そのときに私が子供の頃から熱中していたコンピュータプログラミングで食っていこうと決めました。そんなわけで、今はMacやWindowsプログラム開発の仕事をしています。まあ最近では、すっかりWindowsの仕事の方が増えちゃいましたけどね。
今はサンフランシスコのベイエリアで暮らしています。プログラミングを始められたきっかけは何ですか。また、これまでにどんなプログラムを作られましたか?

AG:私が11歳のときに、小学校の仲の良い友達がApple IIを見せてくれたんですよ。その頃はちょうどアーケードゲームの大ブームが始まっていた時で、僕らもゲームを作ろう!となったんです。気がついたら、どっちが面白いゲームを作ったかってお互い競い合うようになっていましたね。それ以来、私達は暇を見つけてはゲームを作るようになったんです。

 私が手がけたMacのプロジェクトは、「JPEGView」「uuUndo」「Transparency」「CU-SeeMe」です。また、「Phred」という名前の、リリースされなかったゲームも開発もしていました。これはもうすぐフリーウェアで登場するかもしれません。

MacOS用プログラムを作るのはなぜですか?また、MacMAME以外に今携わっているプロジェクトがあったら教えてください。

AG:Macのプログラムを書くのは、開発ツールが素晴らしいからです。PowerPCも大変気に入っていますし、Macのマーケットは居心地がいいんです。MacMAME以外には今のところMac関係のプロジェクトには参加していません。

MacMAMEに関わるようになったきっかけは何ですか?今まで他のエミュレータをプログラミングしたことはありますか?

AG:私のMacでのエミュレータ初体験は、Atari2600エミュレータのStellaの移植版でした。サウンドコードの改良版を私が書きました。そんなときにMacMAMEでパックマンの音があまりにもひどいのを聞いて、これは私の出番だなと思ったんです。そんなこんなでMacMAMEと付き合うようになりました。

MacMAMEチームでの自分の役割のようなものは何だと考えていますか。これまでにGilesさんが手を加えた中で特にメジャーなものは何ですか?

AG:私の担当は、どちらかというと最適化部分ですね。MacMAMEのサウンドシステムや、ビデオ表示システムは完全に書き直しました。それから、4つのCPUエミュレーションコードのPowerPC用アセンブリ化が終わっています。それからMAME全体のドライバをまとめる作業もしました。私が書いた最初のドライバは「Mappy」です。アーケードゲームの中では、私の中でナンバーワンでしたから。それから書いたのが「Dig Dug」でした。これはBradがお気に入りということで。その後は「Dig Dug 2」「Super Pac-Man」「Pac & Pal」「Spy Hunter」「Rampage」「Tapper」「Tron」や、Bally/MidwayのMCRゲームをいくつか書きましたね。

 MAME0.30で追加したゲームは「Food Fight」「Gauntlet1・2」です。それと「Quantum」のお手伝いもしました。私は68000コアをもっと使うように頑張ってきました。この結果、最近「Rastan」を追加することが出来たんです。このゲームの再現性を上げるのには結構時間を費やしました。以前Macの680x0を解析したときの経験のおかげで、満足ゆく動作が得られたと思います。

MacMAMEでのお気に入りのゲームを教えてください。

AG:たくさんありすぎますね(笑)。私の場合ゲームをプレーするより、プログラムを書くほうに時間を費やしています。それでも、時間のあるときは週に20時間以上やったりします。もっとがんばりますよ。

プログラミングやゲームをするのに使っているハードは何ですか?

AG:今はPower Computing社のPowerCurveをPowerPC604の120MHzにアップグレードしたマシンを使っています。特別速いというわけではないんですが、そのおかげで、アセンブリのCPUコアを書く気になりましたから。そう捨てたモノじゃないですね。恐らくお金が貯まれば、あこがれのG3にアップグレードするでしょう。

開発ソフトは何ですか?

AG:MetrowerksのCodeWarriorとResEditだけです。はっきり言って、これだけあれば本当に十分なんです。

このプロジェクトはいわゆる無償な訳ですが、それでもGilesさんを駆り立てるものとは何ですか?

AG:何よりもその魅力ですね。私も子供の頃にはいろんなゲームをしたものです。その頃の思い出がドライバを書く原動力になっています。でも最近は、ゲーム自体よりも、それらがどのように動作しているかという方に興味が引かれています。聞いたこともないようなゲームのドライバをどのように書けばいいかを探り出すエネルギーは、すべてその興味という部分から来ています。MacMAMEのようなエミュレータについては、倫理性や合法性について多くの議論がされていますが、エミュレータでゲームをしている人たちがオリジナルのROMを持っていないのは明らかです。いずれ、ゲーム業界がつぶしにかかったり、圧力をかけてくるようになると思いますか?

AG:私は3つの段階があるように思います。まず最初は、1997年の初めの頃のように、まだレーダーに捕らえられていない状態です。つまり、エミュレータ自体がマイナーすぎて、ゲーム業界が気に留めるほどのものではない段階です。

 第2段階は今のような状態です。次第にエミュ人口が増えてきて、ゲーム会社が気づき始めている時です。そういう会社の中には、昔の自社製品から、今でも別な製品に利用することを考えているかもしれませんし、そうなると自社の所有物については守りの姿勢になるでしょう。ここが恐らく、ゲーム業界が反エミュレーションの姿勢を取るか、それとも道理にかなった方法を見つけて次のステップに進むかどうかのポイントになると思います。

 第3段階は、私としては次第にこうなっていってほしいと思っているのですが、エミュレーションというものが認められて、初期のROMについてはパブリックドメインになるか、そういったゲーム会社自身がROMをパッケージ販売するというものです。欲を言えば、合法的なアーケードROMのCDが20ドルくらいでメジャーなゲーム会社から手に入ればいいですね。残念ながらこういう選択肢はまだありませんが、ゆくゆく実現してくれることを願っています。MacMAME0.30の登場がせまっています。今回のリリースはいつもよりも時間が費やされているように思えるのですが、どこに時間がかかって、どのような改善が見られるのでしょうか?

AG:ズバリ、サウンドです。多くのゲームで音質の向上やサウンドエフェクト、さらにきちんとエミュレートされた音楽やボイスを実現するために、信じられないほどの努力が続けられています。きっと皆さんびっくりすると同時に満足するレベルだと思いますよ。古めのゲームならとんでもないくらい改良されています。今のところ新ドライバの追加も滞りなく続いています。このリリースでは50以上のゲームとクローンを簡単に追加できると思っています。

MacMAMEで将来予定されていることは何ですか。0.3でサポートされていないもので、是非追加したいと思っているこれといったゲームはありますか?

AG:あまり欲張りたくはないんですが...まず、何よりも高速化です!それからゲームについては「Crossbow」「Karate Champ」、「Marble Madness」「Paperboy」、それから「Star Castles」「Tailgunner」を追加したいと思っています。DOS版エミュにしかないゲームは、もう全部追加したいです。

まあ、私が頑張ればいいんですけど(笑)

MacMAMEの最大の弱点は何でしょうか、またそれについて改良などは考えていますか?

AG:恐らくユーザーインターフェース部分が改良すべきところです。ただ、インターフェースの仕様がまだ固まっていなために、いつになったら完全にMac的に出来るかはわかりません。あとジョイスティックのサポートも全然足りないですね。でも、最新型の高性能ジョイスティックっというのは、案外オールドゲームをするのには適さないことが多いです。もしパックマンをFlightstick Proでプレイしたら、発狂しますよ。それから、スピードについてですがまだ改良点があります。「Gauntlet」のようなゲームをやったらきっとわかると思います。

Rhapsody(訳注:MacOS Xの原型)がようやくはっきりとしてきましたが、Gilesさんや他のMacMAMEチームの人たちは新OSにMacMAMEを移植することを考えているのでしょうか。また、Rhapsody版MAMEは、今のMacMAMEやPC版MAMEに比べてどのような利点があるのでしょうか?

AG:Rhapsody版MAMEは今のものとは全く違ったものになると思います。RhapsodyはUNIXベースのシステムですからね。すでに多くの人が取り掛かっているXMAMEをベースに一からやり直したほうが理屈にかなっています。私にとってはUNIX版MAMEをRhapsodyネイティブに書きかえることはまた別な意味で興味深いことですが、まあ結局はプログラマー次第ということになるでしょうか。私達としては、そのときが来れば時間の有る無しにかかわらず恐らく取り掛かると思いますよ。そうじゃないと、たぶん別な人が先導してRhapsody版を作ってしまうでしょうから。

 Rhapsody版の利点について言えば、特に大きなプラスというのは無いと思います。重要なのはビデオ関係のハードに直接アクセスできるかどうかです。MacMAMEでは様々なテクニックを使って、画面の更新を最低限の小さい部分だけで済むようにしています。これ無しではスピードは間違いなくがた落ちするでしょう。またこのおかげで、デバッグのときの助けにもなっています。クラッシュするかわりに、メモリをクリアしなければならないことをOSが教えてくれます。

プログラム以外に、興味のあるものは何ですか?

AG:仕事とMAMEに関わっている時間、といって最近ますます増えてきているのですが、それ以外の時には、ハイキングをしたり、本を読んだり、それから昔の映画を見たりしますね。

お気に入りのMacゲームがあったら教えてください。

AG:「Battle Girl」はクラシックアーケードゲームの流れを良く引き継いだものですね。このゲームには本当に感動しました。それから本棚には「Heroes of Might & Magic II」の箱が埃をかぶって置いてありますが、これもよく楽しんだゲームです。ただし時間のあるときだけですけど(笑)

現在のMacのゲームを取り巻く状況についてはどう考えていますか。どうすれば改善するでしょう?

AG:前に比べればだいぶ良くなってきたと思います。大体の人気PCゲームは移植されていますし、これはうれしいことです。とはいうものの、これから先6ヶ月~1年を見てみると、移植予定は少ないですね。大抵のゲーム会社はMacマーケットについてはまだ様子見の状態といえます。この状態を改善するにはAppleがゲームについて真剣に取り組む以外にないですね。

Appleの現在の戦略についてはどうお考えですか?

AG:うーん、1年前から見れば少しはましになったと思いますよ。でも、まだ完全とは言えないでしょう。Rhapsodyのアイディアは良いとは思いますが、ホームユース版はまだリリース予定がありません。私にはそれほど興味は無いんですが、安定したハイエンド用の開発システムとして切り離すのがいいのかもしれません。

 本物の仮想メモリシステムへアクセスする本物のマイクロカーネルのトップでMacOSが動作するというアイディアは本当に気に入っています。すごく奇抜なアイディアです。使いやすさを目標にしているMacで唯一完全に失敗作なのはメモリ管理の部分です。モダンOSでは、システム全体でそれぞれのアプリケーションにメモリ制限を設定するなんてばかげてますからね。Allegroで最終的にそういうモダンメモリ管理が実現することを望むばかりです。Steve Jobs氏に何か言いたいことはありますか?

AG:コンシューママーケットを忘れないでほしいです。AppleはGameSprocketsのリリースなどの本当に洗練されたことを2、3年前に行って、やっと芽が出始めた今になってそれらを縮小するという、何ともあきれたことをしています。ゲーム開発者にとっては「我々はゲームについては本当に真剣に考えている...いや、ちょっと待てよ、やっぱり冗談でした」と言われているようなものです。

 家庭用コンピュータの売上はゲームが引っ張っているということは、MicrosoftとIntelは良くわかっています。一般的にはホームユーザーがコンピュータを買い換えたりアップグレードするのは、最新のゲームがしたいからであって、最新のクラリスワークスを使うためではないですからね。Appleがコンシューママーケットで成功するかどうかは、ゲームのサポートをいかに一生懸命するかに本当に懸かっています。

今日はどうもありがとうございました。最後に何かありましたらどうぞ。

AG:じっと我慢して待っていてください...MacMame 0.30は期待を裏切らない出来です!

英語元記事